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衆議院議員 税理士 あんどう裕

ひろしの視点

HIROSHI’S POINT OF VIEW

ひろしの視点

2014/12/06

再生可能エネルギーの限界 ~固定価格買取制度は、何のための、誰のための制度なのか~

再生可能エネルギーの普及に歯止めがかかりそうです。再生可能エネルギーの新規参入事業者が予想以上に多く参入し、電力会社の受入可能容量を上回る恐れが出てきたため、一部の電力会社では、新規の買い取り契約を当面停止するということになりました。

例えば、九州電力では、どのようなことが起きているか。九州電力管内では、電気の使用が少ない時期の昼間の需要は、約800万KW。これに対して、既に契約を済ませた再生可能エネルギーは、約1260万KW。つまり、全ての契約済発電所が、全量の発電を始めたら、供給過多となってしまいます。

電気というものは、貯めることができません。そして、電気は使用する量と供給する量を常に一致させておかなければ停電を起こしてしまいます。今、再生可能エネルギーは、全量の買い取りが電力会社に義務付けられていますが、例外として、供給過多となる時は、買い取りは拒否することが出来るということになっています。

なぜこんなに一気に再生可能エネルギーの新規参入者が増えていったのか。新規参入者のうち、大部分は太陽光発電事業者が占めます。太陽光は買取価格がかなり割高に設定されていて、一度契約をしてしまえば、一定量以上であれば、20年間、確実に利益を上げることができる仕組みになっています。これなら、買取価格が高いうちに契約しておこうという事業者が増えるのは当然のことです。そして、割高な買取価格は、消費者に転嫁されます。つまり、電気料金を値上げすることによってその資金が調達されます。単純に言えば、再生可能エネルギーは、導入が進めば進むほど電気料金が上がっていくということになります。

これが、固定価格買取制度と言われる現在の制度の大きな問題点なのです。そして、「電気料金が上がり過ぎたから、固定価格買取制度を止めよう」として、この制度をやめたとしても、すぐに電気料金が下がるわけではありません。なぜなら、先程お話しした通り、一度契約したら20年間は買い取らなくてはならないということが電力会社には義務づけられています。新規契約はやめることが出来ても、既存の事業者からは20年間買い取り続けなくてはなりません。そのため、契約が切れるまでは消費者は高い料金を支払い続けなくてはならないのです。

この再生可能エネルギーの固定価格買取制度は、民主党政権の「置き土産」とされています。原発事故後の大混乱の中で、菅首相の肝入りで導入されました。冷静に議論をすれば、最初からこうなることがある程度予見されたはずのものです。

そして、もう一点問題点を指摘しておきたいと思います。

太陽光発電は、一度設置したらそのまま置いておけば良いものです。地域の雇用は増えません。

また、その事業者が地元の事業者でない時は、利益にかかる税金も地元に入りません。入るのは固定資産税くらいです。事業者が外資であれば、その利益は海外に流出していくことになります。さらに、太陽光パネルも海外のものを使えば、設備投資資金も海外に流出することになります。

つまり、広大な土地を使用しながら地元に雇用も税金も発生せず、最悪の場合は海外に日本の富が流出するのみという構図が出来上がる恐れがある。これも現在の固定価格買取制度の大きな問題です。これらの課題に、もっと真剣に取り組んでいかなくてはなりません。私自身は、この固定価格買取制度は一日も早くやめなくてはならないと、繰り返し党の部会で発言してきましたし、これからも言い続けていかなくてはならないと思っています。

一方、本当に雇用を産み、地域経済の活性化に効果のある再生可能エネルギーもあります。例えば、木質バイオマス発電などは、地元の間伐材を燃料として発電する方法です。これであれば、地元に雇用も産まれるし、林業の再生にもつながります。かなり大きな面積の森林が必要らしく、簡単に導入できるものではないようですが、実用化に挑戦している地域もあります。また、この発電方針であれば、太陽光のように天候に左右されることもなく、安定した電源となるので、資源を海外に依存している我が国にとっても、安価に実用化できれば、大変意義のある事業となります。

このように、再生可能エネルギーも、その種類によって我が国の国益となるもの、そうでないもの、各種様々なものが存在します。何となくクリーンなエネルギーだから良いのではないかというイメージのみで導入を促進すべきものではありません。本質を見極めた冷静な議論が必要です。

そして、もう一つ心配なのは、発送電分離についてです。現在の再生可能エネルギーの固定価格買取制度は、発電事業者と送電事業者が違う、いわゆる発送電分離の一形態です。電気は常に需要量と供給量を一致させておく必要があります。現在は、電力会社が発電も送電も一括管理をしているので、需要に合わせて供給量を調整することも容易ですが、発送電分離を実行すると、この調整が困難になり、大停電が起こる恐れがあります。電力自由化を進めると言われていますが、果たして電力に完全自由化は適しているのか、これも冷静な議論が必要です。

-「ひろしの視点」第4号(2014年11月)より-