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衆議院議員 税理士 あんどう裕

ひろしの視点

HIROSHI’S POINT OF VIEW

ひろしの視点

2020/11/03

臨時国会が始まりました

尖閣諸島周辺海域に中国公船がほぼ毎日出現しています。毎日のことなのでニュースにもなりませんが、かなり危険な状態です。
10月の実績を見ても、いわゆる接続海域に侵入した日数は31日中31日。つまり毎日です。侵入したのべ隻数は101隻。つまり毎日3隻程度の中国公船が尖閣諸島周辺に来ています。このうち、領海まで侵入したのが4日のべ8隻。このことも、一部を除きほとんど報道されませんでした。報道されても、多くの日本人は知らない程度の報道です。
10月の領海侵入について報道した読売新聞の記事では下記のような書きぶりでした。

『中国公船、尖閣の領海侵入57時間超…漁船追いかけ回す
沖縄県石垣市の尖閣諸島沖の領海に中国公船2隻が侵入し、11~13日の57時間39分にわたってとどまった。2012年の同島国有化以降、最長だ。菅内閣が発足した先月の領海侵入はなかった。政府は、中国が再び挑発行為を活発化させることを警戒している。』

『第11管区海上保安本部(那覇市)によると、接続水域にいた中国公船3隻のうち、「海警1302」と「海警2302」が11日午前10時47~48分にかけ、1隻の日本漁船を追うように大正島の領海に入った。中国公船は漁船に対して無線で領有権を主張し、海域から退去するよう一方的に求めてきた。
海保の巡視船が間に割って入って退去を命じたが、中国公船は無視し、執拗に漁船を追いかけ回した。漁を終えた漁船が領海を出たのに合わせるかのように、中国公船は13日午後8時26分に退去した。
連続滞在時間はこれまでの最長だった今年7月の39時間23分を超えた。外務省は11日から13日にかけ、計3回、中国大使館を通じ、中国側に抗議した。』

一応抗議はしているものの、形式的に中国大使館を通じで抗議しているだけです。
日本経済新聞は、10月12日の記事で下記のように伝えています。

『中国、尖閣奪取シナリオも 海保の2倍の公船で圧力
東シナ海・南シナ海で中国が勢力を拡大する。軍事力の威嚇にくわえ、中国海警局が管理する中国公船や民間漁船も動員し「数の力」で相手国にゆさぶりをかける。
日本の海上保安庁によると、2020年4月14日から8月2日まで111日連続で沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領海のすぐ外側にある接続水域で中国公船を確認した。日本政府が12年9月に尖閣諸島を国有化してから最長だ。接続水域に進入した中国公船の数は延べ408隻だ。
10月11日には中国海警局の船2隻が相次いで領海に侵入した。領海侵入は8月28日以来となる。
1千トン級以上の中国公船は12年末の40隻から14年末に82隻と倍増し、海保の巡視船(54隻)を上回った。19年は130隻と海保(66隻)の2倍に達した。76ミリ砲とみられる機関砲を備えた1万トン級の船も登場した。
中国公船は「中国漁船の保護と監視」を名目に尖閣周辺に現れる。海保が退去を警告した中国漁船は19年に147隻と過去5年で最も多かった。
中国海軍は艦艇が装備するミサイル垂直発射装置(VLS)の発射口数が20年に2000基を超え、日本(約1500基)を上回った。長距離の対艦ミサイルで、日本のミサイルが届かない海域からも攻撃できる。
中国の強硬姿勢を懸念し、日本の漁船は尖閣周辺から遠ざかる。尖閣諸島文献資料編纂会によると、1970年代は年160隻以上の日本漁船が尖閣付近で操業したが、最近は10隻に満たない。国吉真古事務局長は「中国公船が居座り、漁船が尖閣付近まで近づくのが難しくなった」と話す。
いまの尖閣の状況は12年に中国が南シナ海のスカボロー礁の実効支配をフィリピンから奪った時と似る。まず漁船を送り込み、保護を名目に中国公船や海軍の艦艇で囲み、フィリピンを追い出した。フィリピンが中国を訴えた国際仲裁裁判所は「国際法違反」との判決を出したが、中国はいまも実効支配を続ける。
中国は第1列島線(九州―沖縄―台湾―フィリピン)内から米軍を追い出す基本戦略を掲げる。スカボロー礁と同じように第1列島線に重なる尖閣も中国は「固有の領土」との主張を続ける。
米戦略・予算評価センター(CSBA)のトシ・ヨシハラ上級研究員は5月の報告書で、中国が米軍の介入を許さないまま、すばやく尖閣を占領するシナリオを作成している、と指摘した。』

11月5日の日経新聞は、中国の海上保安庁にあたる中国海警局で外国船舶に武器使用を認める法案を準備している旨の報道をしました。

『中国海警の根拠法草案 外国船に武器使用認める
中国の国会に相当する全国人民代表大会は4日、海上警備を担う中国海警局の根拠法となる海警法草案の全文を公表した。外国船が中国の管轄する海域で違法に活動し、停船命令に従わない場合は武器を使えると明記した。
沖縄県・尖閣諸島周辺の海域で衝突リスクが高まるとの指摘がある。海警局の船は武器を搭載しており、草案は国家主権の侵害があると判断して警告の効果がない場合や緊急時には使用できるとの法的根拠を付与した。
武器使用に厳格な規定がある日本の海上保安官に比べ使用要件が緩い特徴がある。
海上保安庁法はまず外国船の乗組員らの「異常な挙動」を確認するよう規定する。その上で「重大凶悪犯罪」につながりかねないなど4つの要件を全て満たさなければ人に危害を与える事態は許容されない。
海警法草案は海警側が攻撃を受ければ、中国公船の機関砲や航空機に搭載した武器も使って攻撃できると認めた。領海などに違法に侵入した外国船に拘留や引き離しなどの措置をとれるとも盛り込んだ。
中国の海洋資源や漁業などの保護を打ち出した。尖閣周辺海域にやってくる中国漁船の保護を名目に、中国公船が日本の領海に侵入するケースが増える懸念がある。
中国が重視する島嶼や排他的経済水域(EEZ)、人工島を守るために必要な行動をとるとも盛った。中国が人工島を造成した南シナ海を念頭に置く。
軍の最高指導機関、中央軍事委員会の命令で「防衛作戦」に当たる方針を明記した。海警局のトップには人民解放軍の海軍出身者が就いており、海軍との一体化が加速しそうだ。草案は計80条で構成する。12月以降に可決する見通しだ。
2012年に発足した習近平(シー・ジンピン)指導部は海警局の強化を進めてきた。19年末時点で中国公船の数は130隻と海上保安庁の巡視船(66隻)の約2倍に増えた。76ミリ砲とみられる機関砲を備えた1万トン級の中国公船も確認されている。
加藤勝信官房長官は5日の記者会見で、中国海警局を巡る動向に関し「引き続き高い関心を持って注視したい」と語った。関係省庁とともに情報収集し「警戒、監視に万全を尽くす」と訴えた。』
この記事にもある通り、中国海警局の船と海上保安庁の巡視船では大きさも数も全く釣り合いが取れていません。記事にも『1千トン級以上の中国公船は12年末の40隻から14年末に82隻と倍増し、海保の巡視船(54隻)を上回った。19年は130隻と海保(66隻)の2倍に達した。76ミリ砲とみられる機関砲を備えた1万トン級の船も登場した。』とあり、中国は確実に装備を増強しているのに対して、日本は全く太刀打ちできない状態です。
11月25日には中国外相が訪日し、総理や外務大臣と会談していますが、これについての報道が下記のようになされています。産経新聞の記事です。
『中国外相、日本漁船の尖閣航行中止要求 首相は香港情勢に懸念表明
菅義偉(すが・よしひで)首相は25日、来日中の中国の王毅国務委員兼外相と官邸で会談し、尖閣諸島(沖縄県石垣市)を含む東シナ海の海洋安全保障について協議した。王氏は会談後、記者団に、尖閣諸島周辺で操業している日本漁船を念頭に「偽装漁船が繰り返し敏感な海域に入っている。このような船舶を入れないようにするのはとても大事だ」と述べた。

会談で王氏は「良好な関係を構築し、感染症対策と経済回復という2つの面において協力していく用意がある」との習近平国家主席のメッセージを首相に伝えた。首相は「両国の安定した関係が日中両国のみならず、地域、国際社会にとっても重要であり、ともに責任を果たしていきたい」と応じた。
首相はまた、6月に国家安全維持法が制定された香港情勢について懸念を表明。北朝鮮による拉致問題の解決に向け、中国の協力も求めた。これに先立ち、王氏は加藤勝信官房長官や自民党の二階俊博幹事長らとも会談した。加藤氏は会談後の記者会見で「尖閣諸島周辺海域における中国側公船の活動について懸念を伝え、中国の前向きな対応を求めた」と説明した。』 日本側の報道では、尖閣において前向きな対応を求めるとともに、ビジネス関係の人の往来については緩和する方向で話合われた、ということです。
さらに、アメリカ大統領選挙との関連で、バイデン氏との電話会談で尖閣諸島は日米安保条約の対象かを確認し、対象であるという答えをもらった、ということも報道されています。
しかし、日米安保条約は、日本の施政権下にある領域について対象となるだけで、仮に中国が尖閣諸島の実効支配に成功すれば、当然に日米安保条約の適用対象からは外れることになります。実際にバイデン氏は「尖閣」という言葉は発していない、という報道もあります。
これら一連の報道でわかるように、中国は確実に尖閣諸島の実効支配を狙い、着々と準備を進めています。
一方で日本はといえば、米国に「日米安保の対象となる」確認を何度も行い、そのたびに安心している。
米国は尖閣がどうなろうと、もはや眼中にないでしょう。むしろ事なかれ主義で「あまりことを荒立てるな」と日本に言っている。そんなことより、国内の混乱を収めるのに精一杯でしょう。
しかし、尖閣諸島を中国に実行支配されることは、東アジアの覇権国家が、ついに日本から中国へ移ることを意味します。日清戦争に勝利したことによって、東アジアの覇権国家は中国(当時の清)から日本へ移ってきたのですが、それがほぼ100年に時を経て中国に戻るということです。世界の勢力図も大きく変わる契機となるでしょう。日本にとっては、何としても死守しなくてはならないのが尖閣諸島なのです。
日本では、尖閣諸島くらいの小さな島はべつにこだわらなくてもいいではないか、という論調もあるようです。仮に尖閣周辺で有事となったとき、日本の世論はどう反応するでしょうか。私は、「話し合いで解決すべき」「自衛隊を出すな」という世論が大勢を占めるだろうと考えています。仮に海上保安庁や自衛隊に死者が出たりした場合には、世論の反対により、衝突は絶対に避けるべきという状態になるでしょう。
本来は、そんなことが発生しないうちに海上保安庁の装備と人員を徹底的に増強して、完全に中国の船を排除しておくべきでした。それこそが紛争を起こさない最適の方法でした。
しかし、緊縮財政の下、そのような増強もかなわず、現在の状況を招いています。
誤った国の財政に対する認識が、領土領海も脅かし、先人たちがまさに血を流して築いてきたアジアの覇権国家の座を、いままさに失おうとしています。
緊縮財政は経済的困窮を招くだけではなく、安全保障も脅かすのです。まさに日本は、誤った財政の認識により緊縮財政を徹底し、国を傾けたその典型例として世界史にその名を刻もうとしています。