ひろしの視点

二〇二〇年は、日本書紀編纂一三〇〇年 ~衆議院予算委員会で質問しました~

予算委員会第四分科会で質問させて頂きました。予算案の審議の終盤には、省庁ごとに分けて審査をする「分科会」が設置されます。第四分科会は、文部科学省の所管する事項について審査する分科会です。

私が今回テーマにしたのは、まず文化庁についてです。文化庁の京都移転が昨年決まりました。まだまだスタートラインに立ったばかりですので、是非京都に移転することを強みにして、より日本の文化が発展するような文化行政をするきっかけとして頂きたいと要望をしておきました。

しかし、今回文化庁をテーマとしたのは、別の論点を述べたかったからです。それは、2020年オリンピック・パラリンピックの年は、日本最古の正史である日本書紀が編纂されて1300年の節目の年にあたるということです。

天皇陛下が昨年お気持ちを表明をされて以来、天皇陛下の退位についての議論が始められています。しかし、今の日本人は、初代天皇の名前を知らない人が驚くほど増えています。2月11日は建国記念日ですが、建国記念日がどういう日なのか知らないということです。

今はグローバル化の時代と言われ、国際人を育てなくてはならないと言われています。英語教育に力を入れるのもその一つですね。しかし、本当の国際人・グローバル人材とは、英語がペラペラ喋ることができる人物のことをいうわけではありません。英語が喋れる人がグローバル人材なのであれば、5歳のアメリカ人の子どもだってグローバル人材だということになってしまいます。しっかりとした知識・教養・人格を備えてこそ、真のグローバル人材になります。そして、その知識や教養の中には、必ず母国の成り立ちを知るということも含まれます。

初代天皇の名前も知らないということは、国の成り立ちを知らないということです。そして、それを知らない日本人が増えているということは、外国人に自信と誇りをもって語るべき祖国の歴史を知らないということです。これでは、外国人に日本の凄さを知らせることが出来ませんし、祖国のことを自信と誇りを持って語れなければ、外国人から尊敬される人物ともなれません。つまり、グローバル人材としては、仮に英語が堪能であったとしても、中途半端な存在となってしまいます。海外に出ても自信と誇りを持ち、日本人として活躍するためにも、国の成り立ちを知ることはとても大切なことです。

そのためにも、日本書紀1300年を良いきっかけとして、日本人が国の成り立ちを再認識することは、とても意義深いことであると考えています。そして、神話の時代から連綿と続く我が国の歴史を知れば、天皇陛下の存在の凄さを自ずから理解できます。

更に、この節目の年に、ちょうどオリンピック・パラリンピックも開催されるわけですから、世界中に日本の歴史の凄さを発信することができます。まさに千載一遇のチャンスです。

vol30-1それから、もう一つの視点は、日本書紀は地方創生にも活かせるということです。

京都南部にも、日本書紀に記述されている土地がたくさんあります。例えば、宇治には仁徳天皇を天皇に即位させるために、自らを犠牲にしたと伝えられている菟道稚郎子(うじのわきいらつこ)のお墓があります。京田辺には、継体天皇が都を置いたと伝えられる筒城宮があります。その他にも、見直していけば各地に様々な伝説が眠っています。これらをしっかりと掘り起こしていけば、必ずそれぞれの地域の郷土愛を育むことにつながり、地域の活力の源となり得るでしょう。

日本書紀に関する話で、私には非常に印象深く残っている人物がいます。それは、戦後、ルパング島で最後の日本兵として30年にわたり戦い続けた、小野田寛郎さんのことです。残念ながら数年前にお亡くなりになりましたが、私は生前に小野田さんの講演を聴いたことがあります。その時のテーマは、ルパング島の話ではなく、小野田さんの生家のお話でした。

小野田さんは、和歌山県の今の海南市の生まれですが、家は神主の家系(神社)なのだそうです。そして、その神社には、驚くべきことに、神武東征の時に滅された名草戸畔(なぐさとべ)という人物を、頭と胴体と足に分けて、小野田さんの家を含む3カ所の神社に埋葬したという言い伝え(口伝)が残っているというのです。日本書紀には、名草戸畔を滅したという記述はありますが、どこに葬ったかまでは書かれていません。その講演の中で、なぜ文書では残さずに口伝で伝えられたのかを聞かれた時に、小野田さんは当時の大和政権に見つからないように文書にはせず、口伝で残したのではないかということを話しておられました。すごい話だと思いませんか?

神話はもちろんフィクションでしょうし、神武東征も作り話かと思いますが、しかし、このような言い伝えが残っているということは、一部には事実も含まれているのではないか。そんな気がしてきます。恐らく、こういう話は日本各地で眠っているのだろうと思うのです。

そして、今の日本ではこのような家に伝わる口伝のようなものが、どんどん失われつつあるように思います。その失われていく大きな要因は、何と言っても、戦後の民法改正で家制度が無くなり、家督相続制度が無くなって、兄弟均等相続になったということが挙げられると思います。

家制度・家督相続制度では、家を次世代に継承していく責任者が明確でしたから、親から子へ、子から孫へと伝えるべきことが確実に継承されていったと思います。現在では、家を継ぐ責任者がいなくなってしまったので、このような口伝のようなものが継承されなくなっています。この家督相続制度を無くし、兄弟均等相続にしたことは、地方の衰退と東京一極集中の原因にもなっています。

以前の「ひろしの視点」にも書きましたが、中小企業を経営する場合、経営者は自分の全財産を使って経営をしています。会社と個人の財産を混同するなというようなことを言う人もいますが、中小企業、同族会社はそのような分離はできません。自分の家・土地を含む全財産を担保に入れて、企業経営をしている会社もたくさんあります。全ての個人資産が会社経営の見えない資本金となっている例が数多くあるのです。

その経営者に相続が発生した場合、その経営していた会社の隠れた資本金であった個人資産が兄弟均等で分割されます。会社経営を引き継いだ者も引き継がない者も均等です。これは、結果的に会社の経営体力を奪うことになります。地方経済を支えているのは、中小企業・同族会社がほとんどですから、地方の中小企業は相続が発生する度に、経営体力が弱っていくのです。そして、会社を継承しない兄弟姉妹のうち、何人かは必ず首都圏にいると言っても良いでしょう。ということは、地方にあった財産は、相続が発生するたびに首都圏に何分の一かずつ集まることになります。つまり、個人財産も相続によって首都圏に集中する仕組みになっているのです。これも東京一極集中の要因の一つです。

私は、この民法改正により兄弟均等相続になったことは、結果的に日本の様々な地域で受け継がれてきた文化の継承を妨げ、破壊をすると同時に、地方の衰退を起こし東京一極集中を引き起こした大きな要因であると考えています。平等を優先したばかりに、貴重な文化と日本国土の均衡ある発展を失ったのではないでしょうか。

vol30-2少し話が逸れました。この日本書紀1300年を契機として、日本各地で失われつつある口伝・伝承を、今のうちにしっかりと保存する必要があると思います。そして、それぞれの地域が神話との関連を見出すことにより、国民のそれぞれの地域に対する郷土愛と国民の愛国心、一体感を育むことができる。このことが日本の力強い発展に大きく貢献すると思うのです。

また、世界の人々も神話の時代から続き、なお先進国であり経済大国であり続ける日本に対して、畏敬の念を抱くと思うのです。

ぜひ、この日本書紀1300年を国家プロジェクトとして取り組んで頂きたい。このことを文化庁にお願いし、文化庁からも前向きな答弁を頂きました。これは必ず日本にとって、また、京都南部にとっても役に立つプロジェクトとなるでしょう。

これから2020年に向けて、私もしっかりと取り組んでいきたいと思っています。

-「ひろしの視点」第30号(2017年2月)より-


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