ひろしの視点

アメリカ大統領選挙の行方

アメリカ大統領選挙の候補者選びが佳境に入ってきました。共和党では、当初誰もが「あり得ない」と考えていた不動産王ドナルド・トランプ氏が大統領候補の指名を確実にしました。

一方民主党は、最初から最有力と見られていたヒラリー・クリントン氏が優勢として伝えられていますが、社会主義者を公言して憚らないバーニー・サンダース氏が大健闘し、未だに決着が付かずにいます。

資本主義の総本山とも言うべき米国で、社会主義者がこれほどの支持を得ているのは驚くべきことですし、それだけ米国内の格差が拡大し、「何とかして欲しい」と思っている中・低所得者層の声がそれだけ大きくなってきているということでしょう。

トランプ氏も、その過激な言動で物議を醸してきました。既存の政治家であれば常識的に口にはしないような発言を繰り返し、しかしその発言は、有権者が口にはしないけれども心の中で考えていることと一致しているので、支持が広がったということでしょう。

トランプ氏は、日本に対しても「在日本軍の経費をもっと請求すべき。それに応じないのであれば、撤退も辞さない」という発言をしているとされています。

日本は現在、在日本軍の駐留経費として7000億円あまりを負担しています。米国の負担額は、3000億円~4000億円程度と思われるので、日本側は、トランプ氏の要求をそのまま受け入れれば、それだけ日本側の負担増ということになります。

それとも、日本政府は在日本軍の撤退を容認するという選択をするでしょうか。本来であれば、自国領土内に外国軍隊が常駐しているのは異常事態であると考えなくてはなりません。実際に、自民党が結党した時に発表した「党の政綱」には、このことを認識して、是正すべきと考えていたと思われる次の文言があります。

六、独立体制の整備
 平和主義・民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正をはかり、また占領諸法制を再検討し、国情に即してこれが改廃を行う。
 世界の平和と国家の独立及び国民の自由を保護するために、集団安全保障体制の下、国力と国情に相応した自衛軍備を整え、駐留外国軍隊の撤退に備える

また、ポツダム宣言にも次のような記述があります。

十二、前記諸目的カ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府カ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルヘシ

残念ながら、今の日本ではこれらのことは実行されていませんし、実現の見通しも立っていないのが現実です。仮に、トランプ大統領が実現し、在日本軍の経費負担か撤退かの二者択一を迫られたとしたら、日本はどちらを選択するのでしょうか。

私は、日本が真の独立をするためには、自分たちの国は自分たちの力で守り抜くという体制整備が必要不可欠だと考えています。日本が自力で国策転換が出来ないのであれば、このような外的要因をきっかけとして転換をするしかないのかも知れません。

vol21-1実際に、トランプ大統領が誕生したとしても、米国がこのような要求をしてくるかどうかは分かりません。米国にとっても、日本に基地があることは、世界戦略・アジアのパワーバランスから見ても有益と考えていることでしょう。そう考えると、日本に駐留経費負担の増額を要求して日本政府がそれを受け入れるというのが、最も現実的なシナリオだと考えられます。

しかし、自民党としては、立党時の党の政綱の文言は決して忘れてはならないと思いますし、いつかはこれを実現することを目指して準備すべきであろうと思います。

一方、民主党が勝った場合はどうでしょうか。

クリントン氏が勝った場合には、それほど大きな変化は見られず、米国の国力はゆっくりと衰退していくことになるでしょう。ただし、サンダース氏が勝利した場合には、かなり劇的に変化する可能性があると思います。また、クリントン氏が勝利するとしても、民主党の指名を獲得するためにサンダース氏の政策を大きく取り入れることも考えられるために、もしかしたら、同様の変化が起こるかも知れません。

サンダース氏は、自ら社会主義者と公言しているように、低所得者、中所得者に目を向け、その救済に力を入れるものと思われます。国民皆保険の整備、TPPに反対して国内の労働者保護を打ち出すなど、今までの米国では否定されてきた政策を主張しています。

この底流にあるのは、中間層を再生させるということです。所得格差が拡大し、中間層がいなくなって下層へと転落していった。これに歯止めをかけて、もう一度分厚い中間層を再生させる。

私も今、米国に必要なのはそういう政策だろうと思います。そして、分厚い中間層を再生させることが出来れば、国内の消費拡大が見込めるので、米国内の内需主導による経済成長が期待出来ます。米国経済の復活は、世界経済にも好影響を与えるので、日本を含めた世界の経済が好転を始めるでしょう。

残念ながら、今の情勢ではサンダース氏の民主党候補指名獲得は難しいと言われています。しかし、トランプ対クリントンになれば、トランプ氏が勝利するという世論調査の結果も出てきました。トランプ氏が大統領になった場合に、どのような政策を実際に実行するのか予測しがたいところがあります。実際に選挙で発言していた内容をそのまま実行するとも思えません。

いずれにしろ、これから半年間の米国大統領選挙から、目が離せません。日本はどのような形になろうとも、日本政府が日本国民の生活の安心・安全を守る体制を整えておく必要があります。

-「ひろしの視点」第21号(2016年5月)より-


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