ひろしの視点

北海道地震による全道停電の衝撃

北海道胆振東部地震が発生し、大きな被害が発生しました。また、北海道の全道が停電し、今の日本でもこんなことが起きるのかと愕然としました。季節が夏だったのでまだ良かったのですが、これが厳寒の北海道の冬季に発生していたらと考えると背筋が凍る思いがします。

その後の新聞記事等を読んでいても、泊原子力発電所が停止しているので、火力発電に頼らざるを得ないこと。火力発電も、老朽化した発電所を再稼働してなんとかやりくりしていたこと。原発が再稼働すれば一気に供給不足は解消するので、新規の火力発電所の投資はおろそかになっていたこと。太陽光など再生可能エネルギーは、まだまだ頼れる電源としては考えられないことなど、いろいろ指摘されています。

vol49-1今でも北海道の電力は急ピッチで復旧しているとは言え、ピーク時の電力需要に対応するだけの供給力は回復していません。原発が再稼働すれば一気に解決しますが、原発再稼働の新安全基準の手続き上、もう少し時間がかかるようです。厳冬期までに供給力を回復しなくては、北海道に住む国民の生活をまさに脅かすことになります。復興にも悪影響が出てきます。

これによって、我々は何を考えるべきか。この地震の直後、北海道電力は送配電部門の分社化を発表しました。これは、電力自由化が法律で決められ、その一環で発送電分離が義務付けられたので、その法律に基づき実施されるものです。今回の地震とは関係ありません。

しかし、今回の地震で指摘されたように、泊原子力発電所が停止している中でも新規の火力発電所の投資が進まなかったのは、まさに電力自由化が決められていたため、原発さえ再稼働すれば、当面無駄になる新規火力発電所を建設する理由が北海道電力にはなかったこと。新しい設備投資をするよりも、老朽化した発電所をとりあえず動かして、原発が再稼働したら老朽化した火力発電所を停止するほうがコストが安くなることは容易に想像できます。新電力とのコスト競争をしなくてはならない中で、非常時にしか使わない火力発電所を建設する理由が見当たらないのです。

電力自由化をせずに、北海道電力が地域独占で、責任をもって全道に供給する。そのためのコストは、確実に電気料金で回収することができる「総括原価方式」が残っていれば、「一見無駄な火力発電所の建設(実は非常時には必要な大切なもの)」という投資もすることができたでしょう。このような非常時の為の投資がおろそかになることは、発送電分離の議論がされていた時にも指摘されていたことです。

vol49-2また、今回の地震で全道停電にはなりましたが、復旧も急ピッチで進んでいます。これは、まだ発送電分離が実施されず、全道供給義務の責任感が北海道電力に残っているからです。これから発送電分離が進めば、「自分がやらなくてもだれかがやるだろう」「自分が復旧まで責任を持つ体制にすると、それだけ無駄な人員・設備と持たなくてはならない。コスト競争力も落ちてしまうので、それはやらない」という考え方をする電力会社も増え(当然の考え方だと思います)、結果的に災害時などの停電からの復旧が遅々として進まなくなる。そうなるのも自明ではないかと思います。

そう考えると、今進められている電力自由化・発送電分離も、もう一度立ち止まって考える良いきっかけをもらったと言うべきではないでしょうか。

北海道の場合、本州とは比べものにならないほどの厳冬期があります。ここを乗り切るのに、電力抜きには考えられません。安定した電力供給があってこそ、北海道も復興し発展するのです。このような発展の基盤となるインフラを安易に自由化すべきではありません。

-「ひろしの視点」第49号(2018年9月)より-


「ひろしの視点」掲載記事一覧