ひろしの視点

憲法改正の議論~いま進めるべきなのか~

今こそ、憲法改正するべきだという議論があります。〝自民党の党是なのだから、衆参で3分の2以上ある今やらないでいつやるんだ〟ということです。もちろん、憲法改正はできるものならやったらいいでしょう。しかし、今、最も日本に必要なのは、議論されているような憲法改正ではないでしょう。

自民党の先人が立党時に想定していた憲法改正の思いをきちんと理解すれば、今、想定されている憲法改正を自民党が以前から党是としていたとは到底思えません。自民党の党是は、本来は「自主憲法の制定」であって「憲法改正」ですらない。

百歩譲って、自主憲法の制定は手続き的に無理で、現実的に手続きが法定されているのは憲法改正しかないのでやむを得ず「憲法改正」を実行するにしても、その心は「国力と国情に相応した自衛軍備を整え、駐留外国軍隊の撤退に備える」ことです。自衛のための軍隊を持ち、自分の国は自分たちの力で守り抜くという独立国として「当たり前」の国家になることです。

その道筋をつけるための憲法改正でなくてはなりません。

小手先で改正してしまったら、相変わらず憲法と自衛隊との齟齬は置き去りにされ、軍隊なのか警察なのか分からない現状が放置されることになります。この議論を深く突き詰めないままに「憲法改正が党是」ということから「憲法改正が目的化」してしまっては本末転倒です。

しかも、「自衛のために備えなくてはならない力」とは、軍事力だけではありません。経済力もそうだし、外交力もそうです。文化力や科学技術力もそうでしょう。しかし、いまの日本は、これらが全て衰退しているのです。このことを認識しないで「憲法改正で自衛隊を明記」したところで現状が維持されるだけ。

本当の意味での国防力は低下する一方なのに、これには目を向けずに放置し、なんとなく党是だからということで、現状を肯定するだけの憲法改正を訴える。これが本当の「保守」のやることでしょうか。

更に、今の日本の政治情勢では、憲法改正を発議したら国民的な議論が巻き起こり、国民を分断するような国民投票運動が全国的に広がるでしょう。それこそ不毛な分断運動です。その要因の一つに、度重なる政権の不祥事や対応の不誠実さがあります。単なる憲法論議だけならまだしも、現在の深刻な内閣に対する不信感のもとに憲法改正の国民投票を実行するのは、国民の中に鬱積している「政権に対する強烈な不信感」を増幅させ、社会的な大混乱を引き起こす可能性があります。とても冷静な憲法論議だけで国民投票が実行される環境ではありません。

まずは、内閣が国民から信頼され、国会が信頼を取り戻さなければ憲法改正の国民投票などは行うべきではありません。憲法改正よりも国民の信頼を取り戻すこと。そのためにも、経済の再生を通じて貧困をなくし、一億総中流の分厚い中間層を取り戻すこと。政治家は謙虚にその職務を遂行し、国民に対する説明責任を果たすこと。その後でなければ落ち着いて冷静な憲法改正議論ができることにはなりません。


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