ひろしの視点

コロナショックへの対応

政府のコロナウイルス対応に日本のみならず世界が注目しています。

国民生活に直結する自粛要請。また、世界各国が「都市封鎖」を実施するなど、世界各国が過去に例のない対策を実行に移し、ウイルスの蔓延を阻止しようと必死で動いています。

日本において、私は医療関係の皆さんは、本当によくやって下さっていると心から感謝と敬意を表したいと思います。自らの危険も顧みず、職務に専念する姿勢は素晴らしいと思います。

一方で、そのような医療関係者の皆さんが、あたかもウイルス媒介者のように扱われる事例があるという報道もあります。決して許されないことですし、このような行為を大人が行うことが世間で問題となっている子供たちの「いじめ」の根本原因となります。このような行為がないことを願ってやみません。

また、先日はあるトラック運転手の方の話もニュースになっていました。荷物を届けたところ、「ウイルスを運ぶな」とか「荷物を直接渡すな」とか、あろうことか、アルコール消毒液をいきなり顔に吹き付けられたという報告もあるようです。物流があってこそ、私たちの生活は守られています。あらゆるところで、私たちの生活を支えてくれているすべての方に感謝し、ともにこの危機を乗り越えていかなくてはなりません。

恐らく、日本は最終的にはコロナウイルスによる死者が世界で一番少ない国となるでしょう。現在の国民の協力体制が継続できれば、それは十分可能です。世界の中でもトップクラスの衛生状態の良さ、もともとの水道の整備状況、さらに手洗いの励行、アルコール消毒液の普及、医療体制の整備状況を考えれば、これだけの社会的基盤が整っている国は、なかなかありません。自信をもって、この危機を乗り越えられると確信しています。

一方で、経済対策については、極めて貧弱であると言わざるを得ません。

先日も所得制限ありで一世帯30万円支給することが決まっていたものが、急転直下国民一人あたり一律10万円支給することに変更されました。

国民一人あたり10万円給付は、自民党内でも強い要望があったものです。私が会長を務める議員連盟「日本の未来を考える勉強会」でも要請してきましたし、私たち以外にも多くの議員が求めていました。

しかし、当初の補正予算案では、我々の要望は受け入れられず、所得制限あり一世帯30万円支給で決定したのです。これは、自民党内の会議のなかで「一律10万円は支給するのに3ヶ月かかってしまう。所得の減った世帯に申請してもらって30万円支給するほうが、時間的に早い」という説明があり、時間が大切だという認識のもとに、私たちも渋々了承した経緯があります。

ところが、今回はその説明も「やはり一律でも早く配れる」と変更され、予算の組み替えということになりました。

一度閣議決定した予算案が変更されるのは極めて異例です。また、自民党本部の会議で説明された内容が後から変更されることも、本来はあってはならないことです。

私たちは、党本部であらゆる政府当局や有識者の意見を聞きながら意見を集約しています。そこでの説明が誤っていれば、当然私たち自民党議員の判断も誤ることになります。

今回、このような事態に至ったことは極めて残念です。聞くところによれば、官邸のほうも一律10万円支給の意向が当初からあったということですから、どこかで誤った情報が判断を迷わせたと言うことができるのではないかと思っています。

いずれにしろ、10万円一律給付ができたのは良かったです。しかし、これはあくまでも小さな一歩。これから本格的な補償をし、経済的被害から国民生活を守り、次の反転攻勢期につなげていかなくてはなりません。

我々がやらなくてはならないのは、今の日本経済全体が持つ生産能力をすべて温存し、コロナ禍が収まった後に一気に反転攻勢できる体制を整えておくことです。そのためには、一社も廃業させない、一社も倒産させない。雇用を守り失業をさせない。失業者が出た場合には、公務員として採用し、働いてもらい生活の糧を得てもらう。第2の就職氷河期を発生させない、こういう方針が必要です。

そのために、今必要なことは、政府の財政が危機的状況である、という誤った思い込みを払拭し、政府が十分な財政出動を行い、国民の経済的被害を完全に補償することです。国民それぞれが持つ経済的体力を維持することは、その後の反転攻勢期の投資・消費に大きな影響を与えます。

これには、莫大な予算が必要となるでしょう。でも、日本はその予算を手当することができます。折しも、日本銀行が国債買い取りを無制限で行うことの検討を始めました。これは、ある意味で無制限に国債を発行できる素地が整ったことを意味します。もちろん、通常の市中消化で問題なく発行できると思いますが、市場に安心感を与えるためにも、日銀のこのような思い切ったメッセージは非常に大きな好影響を与えると思います。それだけ日銀内でも危機感が大きくなっているということなのでしょう。

それでは、政権幹部あるいは自民党内で危機感が共有されているかと言えば、そうでもありません。「とりあえず第一次補正予算を通して、その効果を見極めてから次を考えよう」という感覚が強いように感じます。

しかし、それではかなり遅い。10万円給付も4月初旬には配布決定して4月中には配布すべきでしたが、結局配布できるのは5月後半以降になりました。

この1ヶ月で生活困窮者は爆発的に増えています。日頃のアルバイトで生計を立てている人が、どれほど多くいるか、恐らく中枢の人たちは実感していないのでしょう。

例えば東京のネットカフェ難民と言われるネットカフェで寝泊まりしている住所不定者は、推定で4000人いると言われています。これも不確実で、例えば24時間営業のマクドナルドで朝まで過ごして昼間はどこかで仕事をして、またマクドナルドで寝る。あるいは、東京であれば山手線なら環状線ですからずっと乗り続けていられるので、そこで寝る。そんな暮らしをしている方も多いのです。そういう人たちは、毎日のアルバイトがなくなってしまえば、たちまち困窮してしまいます。パートに出ている方もそのパート収入がなければ生活に困窮してしまう方は非常に多い。

東京の永田町や霞ヶ関にいると、その危機感が共有できないのでしょう。自ら事業をしていた経験のある人は資金繰りの厳しさを実感しているだろうけれども、そういう経験のない人はなかなか実感がわかないのでしょう。

また、最近は私の事務所に大学生が出入りしていますが、彼ら彼女らもかなり生活に困窮しています。奨学金は当然のように借りていて生活費や学費は自分持ち。日頃の生活費は毎日のアルバイトで賄っている。そういう大学生が驚くほど多いのです。

すでに大学生の13人に一人が、家族の収入が減ったり、自らのアルバイト収入が激減したりして授業料が払えないために退学を検討している、というニュースもあります。

このコロナショックが表面化して経済的にダメージを与えはじめたのは3月上旬からですから、ほんの2ヶ月も経たないうちにこれほど影響が広がってしまうのです。

これは、今の日本の家庭が、いかに貯蓄のない中でぎりぎりの生活をしているかということの証明です。今まで表に出てきていませんでしたが、平成の時代に格差が拡大して、中間層がいなくなり、富裕層と貧困層に二極化してしまいました。富裕層がそれなりに資産を蓄え、所得を得ていたので、平均賃金等のデータではあまり分からないのですが、所得の中央値を見ると確実に低下していることがわかります。20代の貯蓄を持たない世帯は60%を超えています。

この危機に、その不具合が一気に表面化してきています。東京などのネットカフェが営業自粛の対象となり、そこで寝泊まりしていた4000人は行くところがなくなりました。東京都は500人分のホテルは確保したと言っていましたが、残りの3500人はどうしたのでしょうか。まだ暖かい季節なので良かったですが、真冬であれば本当につらいことになります。しかも、それは男性だけではありません。女性のネットカフェ難民も本当に増えているのです。

今、政府が考えなくてはならないことは、この経済危機をきちんと国民の皆さんに安心感を持ってもらって乗り越えること。そのためには、ありとあらゆる経済的補償を十分に行い、国民に経済的損失を負わせないこと。

生産能力を温存し、コロナ後の反転攻勢期に従前の生産能力を十分に発揮して、世界の先進国として生き残ることに全力を注ぐのです。

そして、その後には、格差社会と東京一極集中の是正を図らなくてはなりません。

コロナショックで明らかになったのは、経済のメインエンジンとして東京に頼りすぎ、東京が停止すると日本経済が沈没してしまう脆弱な体制であったこと、そして、東京一極集中は感染症に対して非常に弱いということです。感染症対策の面からも、東京一極集中を是正しなければなりません。

サプライチェーンの中国依存の脆弱性も明らかになりました。これを国内回帰させて、さまざまな製品の安定供給網を再構築しなくてはなりません。

世界は、グローバル化の時代から再び各国の国民を大事にする真の国際社会を構築する必要性に迫られます。

ヒト・モノ・カネの動きを自由にすれば、必ず経済的に豊かな社会を実現することができる。そのグローバル化の発想は、イギリスのEU離脱が象徴するように「幻想」であったことが明らかになりつつありました。そこにこのコロナショックがやってきて、ヒトの動きを完全に遮断しなくてはならなくなりました。世界各国は改めて自国民の生命を守り、生活を守り、またその国の範疇で経済を最大限活性化させなくてはならない、そういう課題を背負うことになったのです。つまり、内需主導で経済成長を遂げなくてはならなくなったのです。

日本は、その点では極めて有利な位置にいます。サプライチェーンの中国依存が進んでいたとはいえ、まだまだ国内回帰は進められます。

また、日本経済の構造は圧倒的に内需主導型の経済ですから、あらためて「構造改革」を進める必要はありません。これまでの「外に打って出る」という戦略から「内需を拡大する」戦略に変更すればいいのですが、これは非常に簡単です。

国内には、非常にたくさんのやらなくてはならない仕事があります。国土強靱化、水道の更新、道路や橋梁の更新、高速道路網の整備、港湾の整備、様々な国内投資がおろそかになっていたために、やるべきことはたくさんあります。

これらを確実に、日本人の手でやっていくことを決意さえすれば、日本経済はコロナ後も大きく発展することができるでしょう。このコロナ自粛期間を完全に補償して生産能力を温存することに成功すれば、日本は世界有数の経済大国としてこれからも生き残ることができるでしょう。

しかし、ここで補償を行わず、生産能力の温存に失敗すれば、経済大国あるいは先進国であり続けることができず、アジアの中規模の経済国として生きていくことになるのでしょう。

私たちは、そういう国を子供たちに残すわけにはいかないのです。


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