デフレ完全脱却による財政再建に向けた
「平成31年度予算編成」についての提言

日本の未来を考える勉強会

日本を二度とデフレ不況に戻してはならない。

政権奪還後5年以上経過してもなお、デフレから完全脱却できていない現状において、できれば次年度に、遅くとも3年以内にデフレ不況からの完全脱却を達成することは、何よりも我々自由民主党が日本国民に対する公約を実行するため、必ず実現しなくてはならない最優先事項である。

骨太の方針にも改めて強調されたように、経済再生なくして財政再建は達成できない。

我々は、政権与党自民党の若手議員として、日本国民との約束を果たすためにも、この提言の政策を実行し、デフレ不況から完全脱却を果たして財政再建の道筋をつけることが、我々自由民主党が現在果たすべき最優先課題であると確信し、提言するものである。

日本経済は緩やかな回復基調にある、とされているが、2014年の消費増税以降、個人消費は伸び悩み、実質賃金は低迷し、そして物価の上昇率は鈍化した。その結果、経済成長率はもとより総税収の増加率自体も鈍化した。

そんな中、2019年10月には再度の消費増税が予定されているが、これが日本経済にさらなる打撃を与える恐れがある。さらに、「働き方改革」によって国民の総賃金の下落が危惧されると共に、これまで内需を支えてきた「オリンピック特需」も終焉する。加えて、世界経済はますます不安定化し、外需が大きく低迷する「世界経済危機」が勃発するリスクは高まっている。

これらの様々な「経済的な打撃」の結果、日本経済が再び激しいデフレに突入することは絶対に避けなければならない。

こうした背景の下、先般閣議決定された2018年度の「骨太の方針」では、「経済再生なくして財政再建なし」の大前提の下、数々の経済的な打撃の「影響」(P.72)、ならびに「経済状況」(P.72)を踏まえて当面の予算を編成するとの旨が明記されている。そして、その予算編成においては、「中長期の視点に立ち、将来の成長の基盤となり豊かな国民生活を実現する波及効果の大きな投資プロジェクトを計画的に実施する」ことも明記されている(P.50)。

この「波及効果の大きな投資プロジェクト」とは、文字通り「将来の成長の基盤となり豊かな国民生活を実現するため」のものであるから、新しい技術開発のみならず、いままで軽視されてきた日本経済の活力の源となる国内人材投資、自然災害から国民生活を守る防災投資も決しておろそかにしてはならない。

また、長期にわたるデフレ不況により、民間企業は賃金を上げることに躊躇している。来年度予算において政府が賃金上昇の先頭に立つことは、今国会における重要政策である働き方改革を成功に導くために必要不可欠である。

私たちは、日本の未来を切り開くために、政府がこの度策定した「骨太の方針」におけるこうした理念に基づき、日本経済の再デフレ化の危惧を乗り越え、デフレを脱却し、財政を根底から再建するために求められる、当面の予算編成のあるべき姿を提言する。


提言1:2019年度当初予算には「10兆円規模の対策特別枠」を設け、「消費増税・働き方改革・オリンピック特需収束」対策を図るべき。

2019年度の日本経済には、消費増税、働き方改革、オリンピック特需収束の「トリプルパンチ」が襲いかかる。この「経済打撃」を乗り越えるためには、少なくとも10兆円規模の政府需要の拡大策を講ずる必要がある(なお、消費増税による内需縮小+働き方改革による所得縮小+オリンピック特需の縮小の合計値は少なくとも10兆円規模に達する)。

提言2:2019年度当初予算の「通常枠」を、前年度比3.2%(約2.4兆円)以上、すなわち、「当初予算プラス2.4兆円シーリング」にすべきである。

上記の提言1はあくまでも「経済的な打撃の無効化」のためのものであり、決して「成長」のためのものではない。骨太の方針では、「名目3%程度を上回る成長率(P.51)」を目指すとされ、政府試算の「経済成長ケース」では、19年から5カ年の平均名目成長率は、3.2%が想定されている。したがってこの想定成長率の達成には、日本のGDPの約四分の一を占める「政府支出」自体も、同程度に成長することが当然必要である。

なお「民需」が低調で、民間総支出の成長率が3.2%に到達しないリスクを勘案すると、政府支出は当初予算において3.2%(基礎的財政収支対象経費2.4兆円)「以上」の規模で拡大することが必要である。

国民生活の安定化のための予算を削減する必要はない。むしろそれらの予算を拡大することと合わせて、経済成長を促す政策に対して積極的に支出拡大すべきである。

政府支出の削減は、すなわち「経済成長を阻害すること」に他ならない。民需主導の経済成長が実現するまでは、積極的に当初予算から財政支出を拡大することを提案する。

提言3:政府支出の拡大は、「中長期計画に基づく、波及効果の大きな投資プロジェクト」に充当すべきである。

上記の提言1、提言2に基づく政府支出の拡大分は、経済・財政の「基盤強化」を効果的にもたらす対象に充当するのが得策である。ついては、「骨太の方針」に明記されている方針に基づき、経済・財政の「基盤強化」を効果的に促す3年~10年以上の期間を見据えた中長期的な「投資プラン」を検討し、これに基づいて、2018年度の「補正予算」を含めた、毎年の当初・補正双方の予算を編成していくことが必要である。

これには、目新しい新規技術開発のみならず、地方経済を支え地方の生活基盤を守る国内人材育成、巨大地震のみならず各種自然災害に対する防災投資もおろそかにしてはならない。

なお、そうした「基盤強化投資」項目としては、例えば、次のようなものが考えられる。

科学技術投資拡大

新元号記念フラッグシップ・プロジェクト

新元号における「恩賜等特別枠」

均衡ある国土発展のための全国の新幹線整備の加速

生産性向上投資の加速

人材育成投資

賃上げ促進

観光投資

全国の高速道路整備の加速

国土強靱化投資の加速

地方創生

新エネルギー投資

消費税増税対策

中小零細企業消費税対策

教育投資

防衛装備投資

提言4:持続的な経済成長を促すための長期的な財政運営について、検討を開始すべきである

政府は日本経済の持続的な成長のため、国家財政がどのような役割を果たすべきか、検討を開始すべきである。例えば、次の事項が考えられる。

資本主義は、負債の拡大によって成長する。この原則を忘れてはならない。

デフレ不況が長く続いてきたため、企業は負債の拡大を恐れ、内部留保を続けている。

適切な経済成長を回復するためにも、企業の貯蓄率にも注目し、企業の貯蓄率が適度な「マイナス」となるまで、つまり企業の各種支出のための資金需要が十分回復するまでは積極的に政府が負債を拡大すべきである。企業貯蓄率が各種支出のために順調に負債を拡大する局面に移行した後には、政府は負債を拡大することをやめればよい。

デフレ完全脱却までは、十分な国民所得を創出するために、また経済成長を促すためにも、政府は負債の拡大を躊躇すべきではないのである。