ひろしの視点

消費税の軽減税率導入について(12月号−その1)

消費税の軽減税率導入が決定しました。

自民党内では導入反対の意見の方が多かったように思いますが、最後は政治判断でした。

税理士として実務家の立場からすると、軽減税率は「言うは易し行うは難し」の制度で、経理事務はとても繁雑になることが確実であり、あまり歓迎すべきものではありません。システム対応できる大手企業はシステムさえ組んでしまえば、それほど事務負担を感じないかも知れませんが、システム導入が難しい中小零細企業で、手作業で経理処理を行っている所は大きな事務負担となるでしょう。そういった事業者に対する配慮が必要となってきます。

vol16-1また、一兆円に及ぶ財源をどうするかという課題も解決しなくてはなりません。

しかし、私は軽減税率を導入する議論の前に、今の日本経済は消費税再増税ができる環境にあるのかということを、冷静に判断する必要があると思っています。確かに、大手企業は増益となっているようですが、よく言われる通り、アベノミクスの恩恵を受けているのは大企業や東京圏や株を持っている人々のみで、大多数の日本人は景気回復の実感を持っていません。

GDPの成長率も今年の7~9月期はやっとプラスになったようですが、それも微々たるものです。GDP600兆円を目指すにはあまりにも小さすぎて、このままでは絶対達成不可能であると思わざるを得ないような数値でした。消費税を5%から8%に3%増税したことは、国民の懐から3%分の現金を抜くことと同じ意味を持つので、消費が落ち込むために、GDPが伸びないのは当然なのです。GDP600兆円を目指すのであれば、その落ち込みを補うだけの大規模な景気対策を打つ必要があります。それができない、あるいはそれをしないのであれば、消費の落ち込みを確実に招く消費税再増税は凍結しなくてはなりません。それほど、消費増税のマイナス影響は大きなものがあります。

昨年末の衆議院選挙の折、安倍総理は消費税再増税の延期と共に、必ず増税を平成29年4月に実施するということを公約に掲げ、景気条項を削除しました。不退転の決意で臨むということでしょうが、そのためには景気回復の実感を日本全国津々浦々まで、そして働く世代から引退した年金世代のお年寄りまで感じてもらわなくてはなりません。

では現在、そのための政策を実行しているかと思うと、とてもそうは思えないのが現実です。地方では様々なインフラ整備の要望があり、地方の中小企業には仕事が不足している現状があるにもかかわらず、安定的に予算付けをしていない現状では、とてもアベノミクスの恩恵を日本全国津々浦々まで届けることはできませんし、地方はますます疲弊していくでしょう。

地方への予算の配分を厚くすると、必ずマスコミが「ばらまき」の批判をします。野党もそれに乗ってきます。財政が厳しいので政府支出削減をすべきであるというキャンペーンをマスコミと野党が行うので、与党としてはなかなか予算を付けることができません。

また、財務省も厳しく政府支出を削減しようとしています。実際の日本の経済力は今でも世界屈指の力強いものがあり、それを使うだけの力があるにもかかわらず、財政が破綻するという間違った思い込みが日本を覆いつくしてしまっているために、正しい経済政策が打てずに地方が疲弊していき、東京一極集中がますます加速していくという悪循環に陥っているのが日本の現状です。この状態から一日も早く脱却させることが、私の大きな仕事だと思っています。

-「ひろしの視点」第16号(2015年12月)より-


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