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衆議院議員 税理士 あんどう裕

ひろしの視点

HIROSHI’S POINT OF VIEW

ひろしの視点

2016/06/08

なぜ共産党の支持率が上がるのか

自民党一強と言われる中、共産党の支持率が上がっています。

京都では、前回(平成25年)の参議院選挙では、15年振りに選挙区で議席を獲得しましたし、同じく平成25年の宮城県議会議員選挙では、改選前の4議席から倍増の8議席を獲得しています。

もちろん、民主党をはじめとする野党がきちんとした政策を掲げることができず、期待できないということもあるでしょう。また、民主党政権時の政権運営があまりにも稚拙だったので、民主党にはもう期待できないという強い失望感もあるでしょう。

しかし、私はそれだけではなく、共産党を新たに支持しようとする人の気持ちも分かるような気がするのです。自民党に所属する人は、とかく「共産党の言うことだから」と言って、共産党の言うことに耳を貸さないことが多いように思います。

長い間、自民党と共産党は常に対立関係にありました。冷戦の時代には、日本は米国と同盟をし、日本共産党はソ連・中国と連携をしていました。いや、冷戦の前から共産党と日本政府は厳しい対立関係にありました。それはなぜかというと、当時の共産党は共産主義革命を目的にする集団であり、一党独裁を目論む強烈な政治結社だったからです。日本や米国を含む自由主義陣営は、共産主義革命から自国を守るために結束し、冷戦時代を戦い抜きました。

皆さんご存知のように、平成3年(1991年)にソ連が崩壊し、冷戦は終結を迎えます。共産主義に対して、自由主義・資本主義陣営が勝利したということになりました。

戦後から冷戦の間にかけて、日本は奇跡的な復興を遂げ、世界第二位の経済大国として復活しました。国民は平和で豊かな生活を享受し、明日は今日より良くなるという希望にあふれていました。二度にわたるオイルショックも乗り越え、繁栄を極めていたと言えるでしょう。

この間、日本は自由主義・資本主義の陣営に属していました。政権政党は「保守」と分類される自民党であり、保守主義は自由主義・資本主義と同義のようになっていきました。冷戦後の自民党は、保守政党であるがゆえに、自由主義・資本主義を突きつめて広げていこうという政策を実行していきます。規制緩和・自由化・小さな政府・自社株買い解禁・独占禁止法改正による談合の取り締まり強化などです。冷戦の終結により、資本主義は共産主義に勝利したのだから、資本主義が正しい。だから、もっともっと資本主義を徹底していくべきだということで、これらの政策を進めてきました。

「保守であるからこそ、資本主義で自由主義であり、競争をさせ、自己責任で活動することが何よりも経済を活性化させ、国民生活が豊かになる。あらゆる規制を見直し、できるだけ経済活動が自由になるように改革を進める。それが保守であり、正しい考え方だ。改革を進めることこそが保守である。」

これが今の日本の〝保守〟と言われる人たちの考え方の主流であるように思います。自民党本部においても、「岩盤規制の打破」が声高に言われるように、ありとあらゆる改革を進めることが自民党だという考え方が支配的です。

しかし、私は少し立ち止まって考えるべき時にきているように思えてなりません。「保守主義イコール資本主義」と定義して果たして良いのでしょうか。

有史以来、人間社会は長い間〝共産主義〟でした。一族で共に助け合い、集団の財産を活用しながら、協力して食べ物を作り、あるいは獲り、それを分配して暮らしてきました。日本においても、一部武士や貴族などの支配階級は存在したものの、基本的には助け合い、分かち合いの中で生活してきています。

資本主義が発生し、発達してきたのは、まだわずかに300年ほど。日本に入ってきてからは、まだ150年ほどしか経っていません。もちろん、資本主義は大規模産業の発展に適した仕組みです。他人同士の資本を合わせることによって、個人では為し得なかった大規模投資を公ではなく民でできるようにし、それによって産業が大いに発展し、人々の生活が便利で豊かになりました。資本主義のこの点における人類に対する貢献は、高く評価すべきでしょう。

しかし一方で、〝資本主義は収奪の仕組みである〟とも言われます。資源の安い国から資源を調達し、それを高い価格で転売する。それによって利潤を拡大していくのが資本主義の基本的な仕組みです。安い資源(これは、石油・鉄などの原材料のほか、土地や人件費も含みます)があるうちは、上手く機能するのですが、どうしても〝勝ち組と負け組〟が発生します。国際間では、古くから南北問題が存在していますが、北に位置する先進国が、資源の安い南の国の資源を活用して、北に富を蓄積したと分析することもできるのです。資本主義は、徹底すると〝勝ち組と負け組〟が発生し、格差を生み出すことは明らかなのです。

もちろん、ある程度の格差が存在するのは仕方がないことです。しかし、格差があまりに大きくなると、人々の不平不満が大きくなり、社会不安を引き起こします。近年の世界で頻発するテロリズムも、貧困がその原因の一つであることは否定できないでしょう。

そして、政治には、この社会不安や不平不満が大きくならないように、格差が拡大することを防ぐ役割が求められます。これがいわゆる「所得の再分配」と言われるものです。経済成長とその成長の分配をいかに上手く達成するかが、政治の大きな役割です。

そして、その経済成長と成長の分配を極めて上手く行っていたのが、高度経済成長期の日本でした。「一億総中流」と言われ、大企業の役員でもそれほど給料が高くなく、普通の社員もそれなりの給料がもらえる社会でした。プロ野球の長嶋選手も王選手も、年俸は決して高くありませんでした。初めて年俸一億円を超えたのは、落合博満選手だったと思います。皆がある程度の範囲内で横並び。それが日本社会の基本的な考え方だったのだろうと思います。これは、ある意味共産主義に通ずるところがあるのではないでしょうか。

そして、この仕組みは、日本の経済成長にも大きく寄与しました。普通の社員でも、そこそこ給料が上がるので、皆の購買力が上がります。購買力が上がるとモノが売れるので、企業の業績が上がります。企業の業績が上がると社員の給料がそれに応じて上がるので、また購買力が上がり、企業の業績が上がります。この好循環によって、日本経済は大きく成長していきました。

今は残念ながら、この仕組みは大きく損なわれています。政府も大企業に賃上げの要請をしていますが、なかなか思うようには賃上げをしてくれません。それよりも、自社株買いや配当を多くする「株主価値の増大」のほうに注力しています。法人税減税が賃上げや設備投資には回らず、内部留保されている状況です。

今、共産党が支持を拡大している理由は、ここにあると思います。企業業績は回復し、上場企業は史上最高益を計上しているにも関わらず、普通の国民には回らずに株主等の一部の人たちにしか回らない。しかも、それには外国人も含まれている。

この現状に対して、人々が怒り、不満を持ち、何とかして欲しいと思っている。だから、大企業を攻撃し、庶民の暮らしを守り雇用を守ると約束している共産党に支持がいくのでしょう。

しかし、考えて頂きたいのは、もともと人間社会は、共産主義社会であり、皆で助け合い、分け合って暮らしていたということ。つまり、保守主義は突き詰めていくと共産主義に相通ずるところが大いにあるはずなのです。

では、なぜ日本では、保守主義と共産主義は対立し、保守主義イコール資本主義になっているのでしょうか。

これは、冷戦期に、共産主義革命を掲げた共産党と対峙するために、言い換えると国民を革命から逃れさせるために、保守陣営が資本主義と手を結んだからです。この期間が長かったので、保守イコール資本主義と思い込んでしまった。そこに大きな間違いがあるのだろうと思います。

そして今、行き過ぎた資本主義が格差を拡大し、社会の安定を損なおうとしています。私たちは、今こそ、徹底した資本主義が人間社会に何をもたらすのかを一度立ち止まって考えるべき時にきています。もちろん、今の日本共産党の主張には、首をかしげざるを得ない部分もたくさんあります。

しかし、「共産党の言うことだから」と耳を貸さずにいると、手痛いしっぺ返しを食うことになるでしょう。更に言うと、民主主義を正しく機能させるには、分厚い中間層が必要であると言われます。格差が拡大すると下層の人たちに不平不満や怒りが溜まります。これらは大きなエネルギーを生むので、結束すると決して良いことはありません。「許し」や「思いやり」が失われ、極端な判断をしてしまいがちです。これが政治の面で使われると全体主義を生み出す要因となります。

真の保守主義とは、徹底的な資本主義でも、革命志向の共産主義でもありません。資本主義と原始共産主義の間を、その時代に応じて揺れる。それが保守主義の立場なのではないかと、そんなことを感じています。

-「ひろしの視点」第19号(2016年3月)より-